没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 文面を見ると開催場所は私が婚約破棄された伯爵家の庭園で開催日時は明日の午前十時、受付は九時半開始となっている。特に変わった部分は見当たらないと内心安堵したのも束の間。
 最後に爆弾投下にも匹敵する内容が綴られていた。

 驚くべきことに『今話題のパティスリーを経営しているキュール侯爵令嬢が、私たちのためにいちごがたっぷりのエンゲージケーキを用意してくれています!』という内容が添えられていたのだ。
 目を剥いた私は勢いよく顔を上げる。

「何なんのこれはっ!?」
 思わず素っ頓狂な声を上げた私に、執事が淡々と、そして静かに言った。
「文面の通りでございます。令嬢には大変申し訳ないと思っておりますがパーティーの目玉であるエンゲージケーキは必ずご準備ください。それでは当日お待ちしておりますのでよろしくお願いいたします」

「私はプラクトス伯爵からケーキの依頼なんて受けてな……って、ちょっと待ちなさい!」
 執事は私の制止を振り切って侍従を連れて帰っていった。

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