没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 ブローチはフリルが幾重にも重なっているところに付けられていたのでぱっと見気にならなかったが、実際のそれは普通のものとは違って厚みがあった。
 ブローチがカリナ様のドレスから離れるとネル君の手の上に移動する。
 ネル君は飛んできたブローチを掴むと、大きなダイヤモンドを台座から外した。
 中から指輪が現れた。それは雫型のブルーサファイアの指輪で、中心には国花であるイベリスの花が象嵌されている。これまで歴代の国王陛下の肖像がで何度も目にした秘宝・人魚の涙で間違いなさそうだ。
「違うの。これは、ただのレプリカなの。本物じゃないわっ」
 レプリカだと言い張るのならどうしてブローチの中にわざわざ入れて大切に隠しているのだろう。苦しい言い訳に、会場にいる誰もがカリナ様が犯人であると悟った。
 そう、カリナ様とフィリップ様以外は――。

< 217 / 238 >

この作品をシェア

pagetop