没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 ――婚約パーティーからとんだ醜聞騒ぎになってしまい、暫く社交界はこの話題で持ちきりになるわね。
 私は帰っていく招待客を横目に主催者のいなくなったパーティーの指揮を執るエードリヒ様に近づいた。
「エードリヒ様、助けてくれてありがとうございます。エードリヒ様には何度も助けて貰ってばかりで頭が下がる思いです」
「シュゼットが大変な目に遭ったらいつだって駆けつける」
「私も同じです。だって、エードリヒ様は私にとって大切なお兄様だもの」
 私が胸に手を重ねて気持ちを伝えると、エードリヒ様がどこか寂しげな表情を浮かべる。どうしてそんな表情をするのか尋ねようとすると、アル様が仏頂面で現れる。

「僕の手柄を横取りしないでくれます?」
「私がいなければこの状況を打開するのは不可能だったはずだが? 特に指輪に関してはな」
 エードリヒ様が目を眇めるとアル様が渋面になる。

「別に他の誰かに頼んで協力を仰ぐことはできました。でも、こういう時は権力のある人を使うのが一番です」
「ほう。つまり魔法使い殿は王族の私を顎で使ったと」
「いやあ、そんな畏れ多いことできるはずないですよ~」
 二人が仲良く話していたのはお互い素性を知っていたからのようだ。それなら私にもアル様のことを話して欲しかったと少しだけ寂しい気持ちになる。

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