没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~

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「え?」
 初めて耳にする言葉に目を白黒させていると、アル様が「最初から話そう」と説明をしてくれた。
 世界樹を守るクストルス一族の中でもアーネル様は強力かつ強大な魔力を持ち、妖魔を一撃で倒すほどの力を持っている。
 妖魔は世界樹があるまほろば島の時間で十年に一度のスパンで現れるらしい。そして少し前に現れた妖魔はいつもより数が多かった。妖魔を一掃することはできたものの、魔力を一気に解放してしまったアル様の魔力は枯渇してしまっていた。
 魔力を回復させるには途方もない時間が掛かり、それを短期間で回復させることができるのは癒しの魔力を持つ乙女だけだという。
「癒しの魔力を持つ乙女は島の外、こちら側で数百年に一度現れると言われている。そしてその乙女こそがシュゼット令嬢だったんだ。あなたの作るお菓子には魔力が込められている」
 アル様は出会った時のことを思い出しているのか懐かしそうに目を細める。

「この森であなたが助けてくれなければ僕は消滅していた。それくらいあの時は魔力が枯渇していて危機的状況だったんだ。本当にありがとう。だけど僕は命の恩人に迷惑を掛けてしまった」
 国王陛下から秘宝である人魚の涙の捜索依頼が来た時、アル様の魔力は戻っていなかった。人魚の涙はアル様の魔力が込められているため、通常なら追跡魔法を使って辿ることが可能。しかし、完全に魔力が戻っていない状態で追跡魔法を発動させると、指輪に蓄積されている魔力がすべてアル様の体内に吸収されてしまい、辿っている最中で居場所が分からなくなる恐れがあった。
 さらに、万が一にでも指輪の魔力がすべて吸収されてしまうとこの国を揺るがす大変なことが起きてしまうらしい。そのため、迂闊に追跡魔法を使うことができず、見つけ出すまでに時間が掛かっていたようだ。

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