没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 ――どうしてネル君がここにいるのかしら?
 あの夜、忽然といなくなって以降ネル君とは一度も会っていない。この三ヶ月間、どこで何をしていたのかずっと気になっていた。

 ネル君は屈託のない笑みをジャクリーン様に向け、焼き菓子コーナーに置いていた試食用のフィナンシェを吟味してから取り皿にのせるとフォークも付けて彼女の元へと運んでいく。

「はいお嬢様、どうぞです! 僕がお嬢様のためにとびっきり可愛いお顔のウサギさんを選びました!!」
 ジャクリーン様はウサギさんフィナンシェがのった取り皿とネル君を交互に見て困惑していた。しかしネル君の愛らしい笑顔に完敗してしまい、完全に頬が緩みきっている。

 ジャクリーン様は侍女に扇を渡してからネル君から取り皿を受け取るとフォークを手にしてウサギさんフィナンシェを一口囓った。

 もぐもぐと咀嚼してからごくん、と嚥下すると取り皿を侍女に渡して扇を受け取り、持っていたハンカチで口元を拭き取る。
 そうして再び扇を開くと口元に寄せてこう言った。
「わ、悪くはなかったですわよ。……というか我が家のパティシエと遜色ない味でした」
 その言葉を聞いてネル君がぱあっと顔を輝かせる。

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