没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 フィリップ様は私が努力しても労いの言葉を掛けてくれることはなかった。一度未来の伯爵夫人として屋敷の運営に関する計画書を作成して持って行ったことがあったけど、フィリップ様は計画書をぱらぱらと流し見しただけでじっくり見ようとはしてくれなかった。その後も彼の書斎に何度か足を運んだけど、計画書が読まれた形跡はなかった。
 あれ以来、努力しても報われないし意味がないという思考に陥ってしまって、常に無駄骨に終わったらどうしようという不安に襲われている。
 だけど私が不安な気持ちを表面に出したら周りに迷惑が掛かってしまう。誰にも気づかれないよう、これまでひた隠しながら過ごしてきた。

 長年一緒にいるラナでさえ気づかなかったからうまく隠せていると思っていたのに。
 ネル君には気づかれてしまった。これは所謂、子供特有の勘の鋭さからだろうか。
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