没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 ラナは頬を膨らませてぷりぷりとしている。
 ある時ラナがネル君にお茶を淹れようとすると「お嬢様が淹れたお茶が飲みたいから大丈夫です」と言って断ってきたらしい。
 その話を聞いて以降、ネル君には私手ずからお茶を淹れている。

 可愛いネル君に指名されて嬉しい反面、ラナにはなんだか申し訳ない気持ちになる。
 私は肩を竦めると宥めるようにラナに言った。

「後でラナにも美味しいお茶を淹れるからね。もちろんお菓子もつけるわ」
「それは嬉しいです。お嬢様のお茶もお菓子も大好きなので楽しみにしてますね!」
 ラナはお盆を小脇に抱えるとストック分のお菓子を取りに厨房に引っ込んでしまった。



 私が店内に備え付けられた小さなキッチンでお茶の準備をしていると、厨房の扉が開いた。
「ただいま戻りました!」
 ネル君が元気に店内へやってきたので私は「お帰りなさい」と返事をする。
「商会へ材料の追加注文をしてくれてありがとう。ここからは少し遠いし、疲れたでしょう? お茶の用意ができているから飲んでね」
 ネル君をイートインスペースへ案内して私はテーブルの上にお茶を置く。

「その前にお嬢様にこれを」
 ネル君は後ろ手に組んでいた手を前に持ってくると、真っ白のデイジーの花束を差し出してくれた。

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