没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 ――こんなに幸せそうに食べて頂いているのに、お店の雰囲気に気後れして入りづらかったのなら申し訳ないわ。

 お菓子を嗜好品にしている男性が少数派であるにしても、気軽にお店に入って来られない状況を作り出していたことは良くなかったと反省する。

 ――男性も気兼ねなくお店に入ってこられるよう、ショーウィンドウの飾り付けはもう少しナチュラルなテイストにした方が良いかもしれないわね。

 できれば彼には今後も私のお菓子を食べに来て欲しいし、幸せそうな表情をもっと見ていたい。
 私はこの青年に不思議と心惹かれていることに気がついた。だけどそれがどうしてなのか、よく分からない。

 答え探しをするために逡巡していると頭の中にネル君の姿が浮かぶ。
 ネル君と青年が纏う雰囲気や話の間の取り方は似ている。髪は青年の方が濃い金髪をしているが、二人とも瞳の色は同じ紺青色で、おまけに恐ろしいほど顔が整っている。

 数々の共通点によって私は勝手に青年とネル君を結びつけて親近感を抱いていたようだ。
 探していた答えに納得していると「ごちそうさま」という声が聞こえてきた。

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