没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 アルが机の上の書類を片付けていると扉を叩く音が聞こえてきた。返事をして顔を上げると、そこにはメルゼス国の君主である国王陛下と隣には宰相が立っている。

「アル殿、今日の仕事は終わったのですか?」
 そう尋ねてくるのは丸眼鏡をかけた白髪交じりの宰相だ。キリリとした眉に鋭い眼光からいかにも真面目な性格であることがよく分かる。

「ええ。今日の分の書類確認はすべて終わったので、僕はもう帰らせていただきます」
「昼間のお昼休憩も随分ゆっくりとされているみたいですけど、いつもすべて終えられて素晴らしいです。流石、まほろば島からいらっしゃったお方は時間の流れがこちら側と違うようですなあ」
「褒めてくれてどうもありがとう」

 アルは宰相の嫌味に対して真に受けているように嘯いた。
 宰相は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたが隣にいる国王陛下が鷹揚に構えているので問題ないとアルは判断している。

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