没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~

 するとカリナ様は煩悶としながら理由を口にした。
「……実は、ずっとフィリップ様の伯爵就任パーティーの時のことを謝りたかったんです。そもそも私はシュゼット様とフィリップ様が婚約していたなんて知らなかったんです。だけど結局は私が二人の中を引き裂き、あなたから大事な彼を奪ってしまった。本当に申し訳ないと思っています。それからフィリップ様はシュゼット様が私を虐めていると言った時、すぐに誤解だと否定すれば良かったと後悔しています。私は話に割って入る勇気がなくてあなたの名誉を傷つけ、社交界に嘘の醜聞を広めてしまった……。本当にごめんなさい」
 カリナ様は懺悔室で罪を告白するように私に胸の内を打ち明ける。

 私はじっと黙り込んだままカリナ様の話に耳を傾けた。
「あの後、何度も考えたの。私がシュゼット様と同じ立場だったら毎日泣いて悲嘆に暮れていただろうって。だけどシュゼット様は私とは違う。強い人で安心しました。……私が同情するなんておこがましかったです」
 カリナ様は表向きは自分に非があり、後ろめたさを感じているように話してくるけれど、本当のところはまったく後悔も同情もしていない。
 だって、彼女の翡翠色の目は軽蔑と人の不幸を見て喜んでいる色が滲んでいるのだから。

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