愛した人は剣奴だったから
力を込めて彼の身体を押し退けながら訴えると、スッと彼が身を引いた。
「……それじゃ、おまえは、どういうつもりでオレを探したんだ?」
彼は、渋面のまま腕組みをしながら見つめ返している。低い声音で不機嫌そうに問い詰める。
「あ、あたなに会いたかっただけなの。お友達になりたかったのよ!」
「……はっ、ふざけるな。おまえは、お友達を買って寝床に呼び込むのかよ?」
付き合ってられないとばかりに顔を逸らすと仕切り直すように指さしている。
「服を着ろ。貧相な胸が見えているぞ。いいのか?」
アデリアは寝具で身体を隠しながら、叱られた犬のように情けない顔つきになっていた。こんなの予想していた展開とは違う。
(この人は、あたしの相手などしたくないのね。うんざりしているのね)
落ち込みながらアデリアは肩紐や腰帯を留め直していく。この間、仏頂面のレンシーは寝台の傍らに立ったまま腕組みをしていた。
気まずい空気が立ち込めている。どういう態度で彼に接したらいいのか分からない。彼は、苦い物でも呑み込んだかのような渋い顔をしている。
「テラスという女から聞いた。おまえは慈善活動が趣味だそうだな。こんなくだないことをする暇があるなら、孤児の衣服を縫ってやれよ」
「無理よ。針で指を刺したらどうするの? 恐ろしい事を言うのね」
「オレの国では貴族の娘も王妃も針仕事をしていたよ。まさか、一度も針仕事をやったことかないのかよ」
「ないわ。そんなの奴隷の仕事だもの」
「ははー、さようでございますか~」
眉をクイッと上げて見下ろしていたかと想うと揶揄するような声で言い放った。
「愚かなお嬢様に言っておくぞ。その気がないなら二度と男を部屋に軽々しく連れ込むな。失って後悔するのはおまえだ」
ピコッと指先でアデリアの額を弾いた後、まるで少年のように白い歯を見せた。彼の雰囲気が先刻とは別人のようにくだけている。
(えっ。この人、こんなふうに笑えるのね)
新鮮な気持ちになり、またしても彼への興味が動き出す。しかし、彼は、ツンとした声で牽制した、
「おい、アデリア。今後は、くだらない事にオレを巻き込むな。マジで迷惑なんだよ。疲れている。いつもなら寝ている時刻なんだぞ。もう帰っていいよな」
「やだー。まさか、今から農園に戻るの?」
「いいや。オレはこの屋敷の奴隷になったんだよ。じゃぁな。もう行くぞ」
大股でザクッとアデリアの寝室から出て行てしまった。すぐさま階下の隷達屋から話し声が聞こえてきた。
『ええーーーー。おまえ、もう済んだのか。早いぞ。えっ、まさか、お嬢様に追い払われたのかよ! マジかよ。おまえは不能なのかよ』
奴隷の男達が呆れたように呟いている。アデリアは真っ赤になり顔を両手で覆った。
「……それじゃ、おまえは、どういうつもりでオレを探したんだ?」
彼は、渋面のまま腕組みをしながら見つめ返している。低い声音で不機嫌そうに問い詰める。
「あ、あたなに会いたかっただけなの。お友達になりたかったのよ!」
「……はっ、ふざけるな。おまえは、お友達を買って寝床に呼び込むのかよ?」
付き合ってられないとばかりに顔を逸らすと仕切り直すように指さしている。
「服を着ろ。貧相な胸が見えているぞ。いいのか?」
アデリアは寝具で身体を隠しながら、叱られた犬のように情けない顔つきになっていた。こんなの予想していた展開とは違う。
(この人は、あたしの相手などしたくないのね。うんざりしているのね)
落ち込みながらアデリアは肩紐や腰帯を留め直していく。この間、仏頂面のレンシーは寝台の傍らに立ったまま腕組みをしていた。
気まずい空気が立ち込めている。どういう態度で彼に接したらいいのか分からない。彼は、苦い物でも呑み込んだかのような渋い顔をしている。
「テラスという女から聞いた。おまえは慈善活動が趣味だそうだな。こんなくだないことをする暇があるなら、孤児の衣服を縫ってやれよ」
「無理よ。針で指を刺したらどうするの? 恐ろしい事を言うのね」
「オレの国では貴族の娘も王妃も針仕事をしていたよ。まさか、一度も針仕事をやったことかないのかよ」
「ないわ。そんなの奴隷の仕事だもの」
「ははー、さようでございますか~」
眉をクイッと上げて見下ろしていたかと想うと揶揄するような声で言い放った。
「愚かなお嬢様に言っておくぞ。その気がないなら二度と男を部屋に軽々しく連れ込むな。失って後悔するのはおまえだ」
ピコッと指先でアデリアの額を弾いた後、まるで少年のように白い歯を見せた。彼の雰囲気が先刻とは別人のようにくだけている。
(えっ。この人、こんなふうに笑えるのね)
新鮮な気持ちになり、またしても彼への興味が動き出す。しかし、彼は、ツンとした声で牽制した、
「おい、アデリア。今後は、くだらない事にオレを巻き込むな。マジで迷惑なんだよ。疲れている。いつもなら寝ている時刻なんだぞ。もう帰っていいよな」
「やだー。まさか、今から農園に戻るの?」
「いいや。オレはこの屋敷の奴隷になったんだよ。じゃぁな。もう行くぞ」
大股でザクッとアデリアの寝室から出て行てしまった。すぐさま階下の隷達屋から話し声が聞こえてきた。
『ええーーーー。おまえ、もう済んだのか。早いぞ。えっ、まさか、お嬢様に追い払われたのかよ! マジかよ。おまえは不能なのかよ』
奴隷の男達が呆れたように呟いている。アデリアは真っ赤になり顔を両手で覆った。