緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)
傷つけたくない。
本当の彼は優しくて、純粋なのだから。

リリカはバスタブから出ると、
洗面所の鏡の前に座った。

「ああーー」

首筋から胸元・・
緋色の徴(しるし)がたくさんついている。

昨夜の熱が、彼の愛が・・
いかに激しかったか・・

これって、消すの、結構、手間なんだよな。
コンシーラーとかあれば、ごまかせるのだけれども

ドライヤーで髪を乾かして、
バックから、化粧品ポーチに入っているファンデーションを取りだした。

リリカは経験上、よく理解をしていた。
出会いがあれば、必ず別れがある。

特に魔女は・・
すぐに別れるのがセオリーだ。

サリエルは・・初めてだったから、引きずらなければいいけど。

リリカは口紅を、ぐいっとひいた。
二度と会わなければいいのだ。

彼が、<魔女に、自分は徴(しるし)をつける仕事をした>・・
そう思って、割り切れれば問題ない。

身支度を整え、バックから小さな香水瓶を取り出した。

自分のシナモンの臭いを、バニラの匂いにうまく変えてくれる。

スプレーをすれば完璧だ。

リリカはバスルームを出て、寝室に向かった。

そこは・・誰もいない。
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