報われたい独占欲は、狂気のソレ
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翌日、朝八時に起き、化粧もしないままハットが付いた黒い帽子を深く被る。バレないようにサングラスを付け、マスクもした。不審者感が半端ないけれど、これでもし悟と出くわして目があったとしても気づかれない。
貴重品を鞄に入れて玄関を開けたその時だった。玄関を開けたその先には、一人の男性の後ろ姿が見えた。綺麗な姿勢で誰かすぐに分かる。長谷川さんだ。長谷川さんは私に気がつき振り返った。私の変装した姿を見て、フッと笑みを見せた。
「尾行する気まんまんって恰好だね」
「長谷川さん……なんでここにいるんですか?」
「今日は仕事で会ってるんじゃないんだよ。『長谷川さん』じゃなくて『奏斗』って呼んで」
いきなり私の目の前に現れてめちゃくちゃなことを言い出す長谷川さん。けれど、今はこの人の相手をしている場合じゃない。
「かっ、奏斗さん……なんでここに? なんの用ですか?」
そう問いかけると、長谷川さんは玄関のドアに足を入れてドアが閉じないように固定した。
「入っていい?」
「いま奏斗さんを部屋に入れてる余裕はないです」
「そっか。うん、そうだね。じゃあ行こうか」
さも、そうすることが当たり前のように奏斗さんは私の手を握った。