見知らぬ彼に囚われて
 その後、動けない身体のまま何度も激しく責められ続けたリーナは、先の見えない人生に絶望し自らの舌を強く噛んだ。
 しかしやはり噛み切ることはできなかった。激しい痛みとともに口中に鉄の味がし、口の端からは赤い筋が流れる。

「リーナ!!」

 男は急いで彼女を抱き起こした。

「あの時私とともに生きたいと強く願った君に、こんな思いを二度もさせるなんて……私は……」

 今までのことを激しく悔いる彼。
 しかしもう手遅れだった。

『だから言っただろう、お前では難しいってな。人間は相手が“年老いた”と言われた姿では、満足しないのさ』

 どこからか声がしたかと思うと、二人のそばには黒い霧に包まれて現れた若い人間の男が。

「そ、その姿は……」

 彼女のそばにいた老年の男が酷く驚き、身体を震わせる。

「なあお前。相手が“俺”なら、満足するだろう?こんな爺に孕まされたくなんて、無いよな?」

 男の腕の中で意識を途切れさせながら力尽きかける彼女に、現れた男はニヤリと口を歪めたまま囁き手を翳した。

「……っい、や……貴方……えっ!?」

 自らの舌を噛み意識が薄れていた彼女は、痛みが消え再び口がきけるようになったことに驚く。

「嫌がる相手の方が、良いに決まっている。声は聞きたいからな。お前だってそうだろう?」

 霧に包まれ現れた若い男はいつの間にか彼女を抱き、老年の男は気付けば彼女を覆っていた縄で縛られたまま離れた場所に座らされていた。

「っあ……!!」

 老年の男は驚きと絶望の表情に変わる。

 リーナの方は何が起きたのかよく分からず、突然現れた目の前の若い男と何かの力で部屋端に追いやられた老年の男を何度も目で追った。
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