見知らぬ彼に囚われて
 若い男もリーナも、もう二度と動くことはない。

 縛られていた男はいつの間にか元の若い姿に戻り、病に倒れた時の姿に戻った彼女が横たわるベッドそばまで来ていた。
 男は動けない身体でなんとかここまで来たらしい。

「……あまりの快感に、間違って女の契約を切っちまった。男は心臓発作とかいうやつか?まあ、二人とも姿が戻って良かったじゃないか」

 姿の戻った異形は、もう動かない二人を見渡しながら楽しげにカラカラと笑う。

 こと切れた彼女の中からは生々しい情事の跡。

「彼女のために嘘で固めようなんぞ健気なもんだ。それにしてもあんなに“異形”の子供を拒むとは、このガキも大したことないな。快感に身を任せりゃ良いだろうに?」 

 異形は軽やかな足取りで部屋を出ていく。

「初婚数日で体調の急変した彼女の命を助けたい、ねえ。だからってここまでして相手を助けたいもんか?」

 家の戸を開きながら、もう動かない二人に聞こえるように言い放ちそして、

「全く、そのまま死なせてやるのとどっちが幸せだったのやら。欲望をちょいと刺激してやったとはいえ、馬鹿だねえ、人間は」

そう高らかに笑った。

 もうすぐ夜明け。
 異形はまだ暗闇の残る外に向かいながら自身に黒い霧をまとわせ、笑いながら消えた。



 異形の消えた部屋の中、こと切れたリーナの身体はベッドから転げ落ち、男のすぐそばに倒れ込む。
 
 その目からは涙が一筋こぼれ落ちた……
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