見知らぬ彼に囚われて
 彼女は気付くと男に抱きしめられていた。
 見れば自分が横たわっているのは先ほどの部屋のベッド。そして身体にはタオルが巻き付けられている。
 水に沈む彼女に気付いた男が運んだのだろう。

 リーナは、自分はまだ生きているのだとぼんやり思った。

「何て馬鹿なことを……そうか、そこまで思い詰めていたなんて。君が強い女性だと思いこんでいた……このくらいなら君は耐えてくれると私は甘えていたんだ。ずっとそばにいたのになんてことを、ごめんよ……」

 そう呟く男は、先ほどの余裕のある雰囲気とはまるで違うように感じる。

 男は彼女の身体を掻き抱き、小さく震えていた。

「……なぜ、私を助けたの?死なせて……貴方なんかの言いなりになるくらいなら、死んだほうがマシよ……」

 彼女の、思わず口を突いて出た諦めの言葉。

 男は彼女が目覚めたことに気付くと突然深く口付け、先ほどのように冷たく言い放った。

「……まだ分かっていないのか。君はもう二度と動けないようにしなければならないな!」

「嫌……もう嫌よ!! 解放しないのならいっそ殺して!!」

 先ほど目覚めたときの様子から打って変わり、男は抵抗する彼女を今度は全く動くことができないよう縄で縛り上げる。

「もう私を殺して!! 嫌、貴方なんか嫌よ!!」

「許してくれ、リーナ……」

 男は、泣き叫ぶ縛られた彼女を強く抱きしめたまま謝罪の言葉を呟き続けた。
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