【コンテスト参加作品】私が愛した人は、殺人犯でした。
その後も一時間くらい家の中をある程度探して、手がかりがないか探したみたけど、それ以外に何か手がかりになりそうなものはなかった。
「……何も見つからないか」
「そうだね。何もなさそうだね……」
手がかりになるものは、卒業アルバムしかないか……。
それでも何もないだけ、マシかもしれない。
「一通り調べたし、帰ろうか」
「……ああ」
文哉は今、どんな気持ちなのだろうか。過去を捨てた今、この家の思い出は……きっと良いものではないはずだ。
辛い思い出でしかないはずなのに……文哉は今、いつも通りの表情をしている。
「文哉……辛くない?」
私がそう聞くと、文哉は「ああ……大丈夫だよ」と答える。
「……そっか」
文哉のためにも、早く犯人を見つけたい。
そう思っていた時だったーーー。
「高根沢……くん?」
後ろから、女性の声が聞こえてきた。
「……有……澤(ありさわ)?」
その人は有澤さんという女性、だった。
「やっぱり……高根沢くん、だよね?」
「有澤……なのか?」
有澤さん……。そういえばさっき、卒業アルバムで見た。
この人が……有澤さん。
「十年ぶり……だよね?」
「……ああ、そうだな」