【コンテスト参加作品】私が愛した人は、殺人犯でした。
「文哉……おかえり」
「……ただいま、杏珠」
「……良かったね」
私の言葉に、文哉は「本当にこれで良かった……のかな」と呟く。
「え……?」
「俺は罪を犯した。……人を殺したことに変わりはない。だからこそ、これで良かったのか……分からないんだ」
不起訴になった今でも、文哉の心は晴れない。
ずっと未だに残り続ける、自分が殺人犯というレッテルを貼られているからこそ、文哉はこの先も罪の意識を持って生きて行かなければならない。
そんな文哉に、私は何をしてあげられるのだろうか……。
「文哉は……文哉のままでいいんだよ」
「え……?」
「文哉が変わる必要なんて、ないんだよ。……ずっとずっと、そのままでいいと思う」
私はありのままを文哉を信じるし、助けていきたい。支えていきたいし、愛していきたい。
「文哉のことは、私が一番よく知ってるから。……文哉はきっとこの先、幸せになれるはずだよ。 ご両親だって、それを望んでるはず」
文哉は、両親の分まで生きていく義務がある。両親が残してくれたその命を、大切にしてほしい。
「……杏珠、ありがとう」
「文哉には、私がいるから。この先もずっと、私がいるから」
ーーー私が愛した人は、殺人犯でした。
【完結】