【コンテスト参加作品】私が愛した人は、殺人犯でした。
「文哉……良かった……」
文哉が生きているだけで、それだけで……私は安心した。
「杏、珠……」
「ん……?」
「有……澤は……?」
有澤さんが警察に捕まったことを文哉に伝えると、文哉は「そうか……」とだけ呟いた。
「有澤さんのことは、ニュースになってた。……本当に、残酷だね」
「……全ては、俺のせいだ」
私は文哉の手をただ握りしめることしか、出来なかった。文哉はただ黙って、声を殺して泣いていた。
「……っ」
私はしばらくの間、何も言うことが出来ずにいた。
「俺……自首するよ」
「……そっか」
そして文哉は、退院したら十年前のことを自首すると私に言った。
そんな文哉に、私は「待ってるから、ずっと」と伝えた。
文哉は少し笑って「……ありがとう、杏珠」と私の手を握った。
✱ ✱ ✱
その後文哉は、警察署に一人で行き、十年前のことを自首した。
しかし十年前の事件のことは、取調べにおいて当時まだ未成年であったこと、そして証拠が不十分だったということで、後に文哉は釈放されることが決まった。
そして逮捕された有澤ひらりは、脅迫罪と殺人未遂、住居侵入罪などで実刑判決を受け、その後刑務所へと収監されたとのことだった。