『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

いつもは忠実でかわいいワンコなのに、何これ。
気まぐれワンコみたいじゃないっ。

「そういう可愛い顔すると、押し倒しますよ?」
「へ?」
「一応、俺もオスなんで」
「っ……」

ヤバい、危険なワンコかも……。
艶気たっぷりな視線を向けて来る。

「俺と勝負しません?」
「勝負?」
「はい」
「何の?」
「飲み比べして俺が勝ったら、キスさせて下さい」
「……」
「ダメ?」

まただ。
テーブルに指組みして、おねだりするみたいに……。

「私、相当強いよ?」
「俺も、かなり飲めるんで」

和沙も言ってたよね。
試しに付き合うのもアリだって。

最初から真剣な恋を期待できる年齢じゃないのは分かっている。
五歳も年下の部下に、ときめく恋を期待してるわけじゃない。
私はただ……。
あの人が言うみたいに、人として欠落してるものがあるのか知りたいだけ。

その延長線上に愛情があるなら、手繰り寄せてみたい。

「いいよ、勝負しよう」
「やった!」

買って来たビールと、家に元々あったワインと。
お歳暮で貰ったウイスキーの瓶をテーブルに並べた。

「どちらかが酔い潰れるか、ギブするか……ですからね?」
「うん」
「じゃあ、開始のゴングってことで」

未開封の缶ビールをプシュッと開けて、改めて乾杯した。

**

二十一時過ぎにスタートした飲み比べ。
正直、三十歳の体には堪える。
と言うより、八神くん……強すぎる。

缶ビールを三本、ワインを一本ずつ飲み干し、七〇〇mlのウイスキーをボトル半分ほど平らげた。
アルコール度数四十のウイスキーの破壊力、凄まじいよ……。

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