『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
お試しに、サブスク的な恋愛でよければ…

「それって私が味見して、やっぱり好みの味じゃないって言ったらどうするの?」
「……俺を試してます?」
「試すというより、見極めたい感じかな…」
「……何を?」

さっきまでのおどけた感じではなく、私の話にちゃんと向き合ってくれている顔だ。
彼はたまにこういう男の顔をする。
普段の彼からは想像できないような、しっかりとした大人の男の顔。

「八神くんの提案を私が呑んだとして、私が、八神くんが思ってるような人じゃなかったら、簡単に手のひら返されるんだろうなぁとか。そしたら、職場で気まずいなぁとか。部下に手を出した上司って言うだけでも引くのに、五歳も年下の子を弄んでるみたいなのも正直嫌だなぁとか」
「フッ、何ですか、それ」
「要するに、トラウマ雁字搦めの三十路女の悪あがきってやつよ」

お酒に呑まれて関係を築いたとして、何も残らないんじゃ意味がない。

「俺、甘く見くびられてますね、完全に」
「え?」
「プライベートを仕事に持ち込まない主義ですし、例え先輩と寝たとしても、セクハラで訴えるとか微塵も考えてませんし。何なら、誓約書書いたって構いませんよ?俺」
「っ……」
「それに、別に先輩と寝たいから言ったんじゃないですから」
「……ん」
「先輩が元彼に言われて悩んでるみたいだから、俺でよければ、何か変われるきっかけになるんだったらいいなぁって思っただけです」
「っ……」
「それと、俺、……あんまり“待て”ができるタイプじゃないんで」
「へ?」
「その気があるなら、早いとこ、餌与えて下さい」
「っっっ」

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