『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
昼過ぎの便で帰国した私は、シャワーを浴びて身支度を整える。
本当は休日扱いになってるんだけれど、今日は仕事納めということもあって、部下に労いをかけに行く予定。
職場へのお土産を手にして、十六時過ぎに職場へと顔を出す。
「お疲れ様~~」
「チーフっ!!」
「璃子さん、おかえり~」
「はい、これお土産♪」
「わぁ~、ありがとうございますっ!」
「市くん、これ市くんち用に。麻里と食べてね~」
「いつもすみません」
「市くん、八神くんは?」
「八神なら、デザイン企画部に」
「あ、そうなんだ」
久しぶりに顔が見れるかな?とか思ったけれど、連絡すれば夜にでも会えるか。
「ちょっと上に報告して来るね」
「はーい」
営業部長の元へと向かう。
急な出張で不在の間の確認業務を代って頂いたこともあり、業務報告も兼ねて……。
ドアを三回ノックすると、落ち着いた声音が返って来た。
「失礼します」
「どうだった?ベルギーは」
「はい、無事に対処できました」
「そう、ご苦労さま」
「浅沼部長(四十三歳)、これ、つまらないものですが、お土産です」
「あら、わざわざ……気を遣わせちゃったわね」
「留守の間、お世話になりました」
「みんな白井さんの不在をカバーしようと、頑張ってたわよ?」
「え?」
「八神くんは、特にね」
「八神くんですか?」
「えぇ、毎日遅くまで残業してたみたい。黒川くんが“よくやってる”って褒めてたわ」
「……そうなんですね」
「彼は使えそう?」
「はい、営業職では勿体ないと思います。処理能力も高いですし、コミュ力が抜群に高いです」
逢えない間の彼を知ることができた。
何だかちょっと擽ったい。