『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
俺以外の男に、ここ、触らせたんだね?

急なトラブルで取引先の本社へと出向くことになり、その本社がヨーロッパということもあって。
トラブルを対処して帰国した時にはクリスマスはとうに過ぎていた。

スマホの着信履歴には『八神くん』の文字がびっしり。
ついつい後回しにしたメッセージの未読数が三十二件。

これは、相当ヤバい案件なのでは……?

羽田空港から自宅へと戻り、洗濯機に衣服を放り込む。
機内で業務報告書を作成しておいたから、そのデータを会社のパソコンに送って。

冷蔵庫を開けると、賞味期限の切れた生ものが目に付く。
慌てて家を出てしまったため、処分する余裕が無かった。

燃えるゴミの日って、いつだったかな?
時差ボケもあって曜日感覚もない。

彼氏も家事も完全に放置して、仕事に憑りつかれたみたいになってる。
このままだと、愛想尽かされそう。

前々の彼氏は“優先順位”が原因で別れた。

私は当時入社三年目で、やっと仕事が楽しくなって来たところだった。
だから、任された仕事は最後まで責任をもって取り組みたかったし、成果も出したかった。
私は同期入社の営業職の中では結構営業成績がよくて、上司の評価も高かった。

それだけに残業も出張も多く、必然的に彼との時間は少なくなっていった。
サービス業の彼の休みは平日で、私の休みは週末。
どう繕っても交差する時間は極端に少なくて。

同棲をして夜だけでもと時間を無理やり合わせようとしたけれど。
仕事で疲れ切っている体では、彼の欲求を満たすことは出来なかった。

あの時でさえ無理だったのに。
三十路を目前にした今の体で、五歳も年下の彼を満たせるのだろうか?

お土産の入った紙袋を見つめ、溜息が零れた。

< 49 / 126 >

この作品をシェア

pagetop