そんな理由で婚約破棄? 追放された侯爵令嬢は麗しの腹黒皇太子に溺愛される

35 キャサリン王妃達のざまぁ-2

 私の手を薄汚れた労働者階級の男が引っ張る。

「汚らわしい! この無礼者めっ! 私にはお前達とは違って青い血が流れているのよ」

 男達の顔色がどす黒く染まり、残忍な笑みを浮かべて私を見た。

「へぇーー、王妃様ともなると俺らとは違う血が流れているらしいぜ。同じ人間だと思っていたから少しは勘弁してやって、国外追放か北の塔に幽閉ぐらいで済まそうかと思っていたのによぉ」

「同じ人間じゃないなら情けは無用だな」
「んだ、んだ。こいつらは極悪人だべ。皆死刑で良いだべさ」

しまった。私はとんでもない失言をしてしまったのかも。

「も、もちろん同じ人間ですとも! 私達のような高貴な人間の血を流すのは神の怒りをかいますよ。私達王族は神からの祝福や力を受け継いでいるのです。わたし達に手荒なまねをしたら、きっとあなたがたに大きな災いが起こるでしょう」

 私は必死になって熱弁を振るった。

「いや、違うね。お前達は神の力なんて受け継いじゃいないさ。その証拠にこのルコント王国には作物のひとつも実らないじゃないか? 神の怒りをかったんだ。ジュベール侯爵令嬢は緑の妖精王の愛し子で、ブリュボン帝国の皇太子妃になられたそうじゃないか?」

「あの方をおとしめて修道院送りにしようとした悪行は全部バレてるぞ! もしかして馬車を崖に突き落とし、暗殺しようとしたのもお前達なんじゃぁないか?」

「そうさ、だからこの地では花も咲かず実もならなくなったんだ! 砂漠のような土地ばかり広がって、おいら達は子供達にも満足な飯を食わせらんねーー」

「まさか、殺そうとなんてしていませんよ。ただちょっと呪われていると言って修道院送りにしただけよ。殺そうとしたことなんて一度もないわよ」

 私はなんとか助かろうと必死になった。けれど結果は・・・・・・

「緑の妖精王に祝福されたジュベール侯爵令嬢を呪われていることにしたのか? ありもしない罪を着せたんだ! 邪悪な王妃や王太子が生きている限り、緑の妖精王の怒りは収まらないぞーー!!」

 しまった。どう言えば良かったの? 殺すつもりはなかった。ただ劣悪な修道院に送ろうとしたことは事実で、ありもしない罪をなすりつけたことも事実だった。

 なにを言っても、もうこの民衆達の怒りは収まらない。・・・・・・そうか、こうなることがわかっていてあのヴァルナス皇太子はわたし達を見逃したんだ。自国の民に裁かせようと、わざと・・・・・・。

 わたし達は今、一歩一歩、長い階段を斬首台に登っていく。身体は震え喉はからからで、恐怖のあまり声も出せない。

 あぁ、お願い!

 こんなことになるのならステファニーを修道院に送らなければ良かった。
 いったいどこから間違ってしまったの?

 助けてよぉーー



< 36 / 41 >

この作品をシェア

pagetop