若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 カレンが失踪してから数か月が経った頃。
 ジョンズワートは、ようやく仕事に復帰した。
 カレンのことは本当につらいが、ジョンズワートだって、亡き父の跡を継ぐ公爵なのだ。
 これ以上、ただ泣いているわけにはいかなかった。
 アーティやサラに支えられながら仕事をするうちに、少しずつ気持ちも上向いてきた。
 カレンとチェストリーは、死亡した。既にそう扱われているが――ジョンズワートは、これからもカレンを……二人を探し続けることを決めた。
 ジョンズワートのことを性的に慰めようとする者もいたが、拒んだ。

「妻がいる身だ」

 そう言えば、相手は驚いたような顔をした。その妻は、既に亡くなっているじゃないか、と言いたげに。
 だが、ジョンズワートはカレンを諦めていなかった。
 この男は……ジョンズワートは、8年もまともに話していなかった、会っていなかった女性に執着し続けた人間だ。そう簡単に、諦めたりしない。
 それに、ジョンズワートはまだ、カレンの亡骸を見ていない。
 カレンが生きている可能性は、ゼロになどなっていないのだ。
 
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