私たちの復讐法

第一話

彼はとんでもない大嘘つきと知ったのは彼と出会って半年後のことだ。多分、半年後である。記憶は確かではないがそれくらいだ。

今の時代すぐネットに出回る。いろんなSNS、ネットニュース、ネット掲示板……デジタルタトゥーと言われるくらいその情報は真偽問わず一度載ると残り続ける。
何かあるとすぐさまネットに流れる。ネットニュースよりも早く出回る時もある。
便利な世の中でもあり残酷な世の中でもある。

その彼の名は平良謙二郎(たいらけんじろう)。35歳。アラフォーである。年齢はそうに見えない。ただその年齢分生きた、としか思えないくらいの肌艶、肉体美。彼なりに努力しているのか天性のものなのかわからない。

あと名前からしてすっごくいい。ただし私は名前で惚れたわけではない。それだけは言っておく。でも名前が彼の魅力を増しているのは過言でもない。これで単純な……何が単純か基準は難しいが……名前だったら魅力は減ると思うがそうでもないかとは思う。

彼は某ホテルチェーン店の御曹司。一人息子。高学歴高身長容姿端麗。
さらっとした手足。バランスの良い頭身。細部まで手を抜かない各パーツ。
先ほども言ったように努力か天性か。
彼のご両親もホテルチェーン店の社長の父と昔某歌劇団女優であった母。
二人とも美男美女であったろう、やはり天性なのか、そうなのか。

私は平良謙二郎というこの男を一目見たその日から……確か何かの雑誌だったと思う……この人に会いたい、この人に私を認めてもらいたい、この人に愛されたい。

そう思った。強く思った、体の内部から、細胞もそう思っているように感じた。大袈裟かもしれないが。そうだったのだ。

そんな彼のふさわしい女になるために、私はあまりこだわっていなかったメイクやヘアスタイルをはじめ身なりを変えた。
ムダ毛処理も完璧にするために大手エステサロンに行きついでにボディシェイプのマッサージも受けた。
もちろん外見だけではいけないとマナー講座やテーブルマナー講座も短期だが通った。
お金はかかったけど今まであまり使っていなかった貯金から出したから別に借金はしていないが貯金は減ってしまった。でもそれも構わないほどだったから。

私は29歳、20代最後なのだ。

結婚や妊娠出産で辞めていく同僚のいる中、継続して仕事を続け企画をたくさん立ち上げ成功、それがわたしの自慢だ。武器と言ってもいいだろう。
あとは……そうでもないけど、これは努力の賜物。と自画自賛してしまう。

そしてようやく私は彼と会うことになった。
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