新そよ風に乗って 〜憧憬〜
「失礼します」
一応、高橋さんと中原さんに挨拶してから、佐藤君は高橋さんの隣に立っている私を見た。
「矢島さん。聞いてると思うんですが、今年の部内旅行の副幹事、よろしくお願いします」
佐藤君に、お辞儀をされてしまった。
「えっ? あっ。いえ……私は、別にその……やるつもりは……」
「矢島さん?」
中原さんが、思いっきり睨んでる。
「あっ……は、はい。ああ、あの……こちらこそ、よろしくお願いします」
ああ。結局、承諾してしまった。
「それで、毎週金曜日を打ち合わせの日に取り敢えずしたいので、早速ですけど今日金曜日なんで、終わってから打ち合わせをしたいんですが大丈夫ですか?」
「きょ、今日?」
エッ……。
何やら、痛い視線を感じる……。ふと見ると、高橋さんと中原さんが呆れたようにジッと私を見つめていた。
うわっ。
「あっ……は、はい。大丈夫ですよ。場所は、何処ですか? 事務所でいいですよね?」
「えっ?」
佐藤君が、驚いたような声を出した。
何で?
思わず、高橋さんの顔を見てしまった。
何故、佐藤君は驚いた声を出したんだろう?
事務所で旅行の打ち合わせって、いけないことなの?
見ると、高橋さんはパソコンの画面を見ながらキーボードを叩いていたが、その手を止めて横目で佐藤君を見上げた。
あれ?
今、何だか高橋さんの視線が怖く感じられた。
「そ、そうですね。それなら、事務所の空いてる会議室でも使いましょうか。じゃあ、仕事が終わったら声掛けますね。それじゃ……」
「ちょっと、いいか?」
佐藤君が席に戻ろうとした時、高橋さんが呼び止めた。
「はい!」
高橋さんは、入社の浅い佐藤君にとっても雲の上のような人だから、やはり佐藤君も最敬礼の口調になる。
「旅行の打ち合わせだが、9月と10月の頭だけは外してもらいたい。決算で、うちも忙しいからな」
「はい。それは、勿論です。他に、何かございますか?」
「それだけだ」
高橋さんは佐藤君の返事を聞くと、また直ぐにパソコンの画面に向き直ってキーボードを叩き出していた。
その日、仕事が終わってから会議室で佐藤君と部内旅行の打ち合わせをしていたが、気がつくとすでに20時を過ぎていて、慌てて今日は終わりにした。
もう3時間も、打ち合わせをしていたことになる。
すっかり、遅くなっちゃった。
「じゃあ、お疲れ様でした」
「それじゃ、矢島さん。また来週の金曜日に、お願いします」
「はい……」
やることは一杯あるし、決めることも沢山あって、すでに1回目で疲れてしまった。
ドアを開けっ放しで使っていた会議室から佐藤君と一緒に出て、席に戻ろうと歩いていると、高橋さんが席に座ってまだ残って仕事をしている姿が見えた。
でも、中原さんは居ないみたいなので、先に帰ったのかもしれない。
「お疲れ様」
高橋さんが、私に気づいて声を掛けてくれた。
「お疲れ様です。まだ、残っていらしたんですか?」
旅行の資料を机の引き出しにしまいながら、帰り支度を始めた。
「ああ。来週の会議の資料が、まだだったからな」
相変わらず、高橋さんは忙しい人なんだ。
私の知らないところで、こうやっていつも仕事をしているんだろうな。そんなことは、何も口には出さないけれど。
一応、高橋さんと中原さんに挨拶してから、佐藤君は高橋さんの隣に立っている私を見た。
「矢島さん。聞いてると思うんですが、今年の部内旅行の副幹事、よろしくお願いします」
佐藤君に、お辞儀をされてしまった。
「えっ? あっ。いえ……私は、別にその……やるつもりは……」
「矢島さん?」
中原さんが、思いっきり睨んでる。
「あっ……は、はい。ああ、あの……こちらこそ、よろしくお願いします」
ああ。結局、承諾してしまった。
「それで、毎週金曜日を打ち合わせの日に取り敢えずしたいので、早速ですけど今日金曜日なんで、終わってから打ち合わせをしたいんですが大丈夫ですか?」
「きょ、今日?」
エッ……。
何やら、痛い視線を感じる……。ふと見ると、高橋さんと中原さんが呆れたようにジッと私を見つめていた。
うわっ。
「あっ……は、はい。大丈夫ですよ。場所は、何処ですか? 事務所でいいですよね?」
「えっ?」
佐藤君が、驚いたような声を出した。
何で?
思わず、高橋さんの顔を見てしまった。
何故、佐藤君は驚いた声を出したんだろう?
事務所で旅行の打ち合わせって、いけないことなの?
見ると、高橋さんはパソコンの画面を見ながらキーボードを叩いていたが、その手を止めて横目で佐藤君を見上げた。
あれ?
今、何だか高橋さんの視線が怖く感じられた。
「そ、そうですね。それなら、事務所の空いてる会議室でも使いましょうか。じゃあ、仕事が終わったら声掛けますね。それじゃ……」
「ちょっと、いいか?」
佐藤君が席に戻ろうとした時、高橋さんが呼び止めた。
「はい!」
高橋さんは、入社の浅い佐藤君にとっても雲の上のような人だから、やはり佐藤君も最敬礼の口調になる。
「旅行の打ち合わせだが、9月と10月の頭だけは外してもらいたい。決算で、うちも忙しいからな」
「はい。それは、勿論です。他に、何かございますか?」
「それだけだ」
高橋さんは佐藤君の返事を聞くと、また直ぐにパソコンの画面に向き直ってキーボードを叩き出していた。
その日、仕事が終わってから会議室で佐藤君と部内旅行の打ち合わせをしていたが、気がつくとすでに20時を過ぎていて、慌てて今日は終わりにした。
もう3時間も、打ち合わせをしていたことになる。
すっかり、遅くなっちゃった。
「じゃあ、お疲れ様でした」
「それじゃ、矢島さん。また来週の金曜日に、お願いします」
「はい……」
やることは一杯あるし、決めることも沢山あって、すでに1回目で疲れてしまった。
ドアを開けっ放しで使っていた会議室から佐藤君と一緒に出て、席に戻ろうと歩いていると、高橋さんが席に座ってまだ残って仕事をしている姿が見えた。
でも、中原さんは居ないみたいなので、先に帰ったのかもしれない。
「お疲れ様」
高橋さんが、私に気づいて声を掛けてくれた。
「お疲れ様です。まだ、残っていらしたんですか?」
旅行の資料を机の引き出しにしまいながら、帰り支度を始めた。
「ああ。来週の会議の資料が、まだだったからな」
相変わらず、高橋さんは忙しい人なんだ。
私の知らないところで、こうやっていつも仕事をしているんだろうな。そんなことは、何も口には出さないけれど。