新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
サングラスを外そうとしていた女性を、高橋さんが制止した。
「珍しい。憶えていてくれたの? 嬉しいわ。去る者は追わずの貴博が、憶えていてくれたなんて。あら? 新しい彼女?」
「貴女には、関係ない」
高橋さんの抑揚のない声。
何だか険悪な雰囲気で、此処に居てはいけない気がする。
「あ、あの、高橋さん」
咄嗟に高橋さんのジャケットの袖を引っ張った。
「私、あのお店見たいので、ちょっと行ってきますね」
「クスッ。可愛いわね。袖を引っ張るなんて」
「し、失礼します」
「ちょっと、待……」
「いいじゃない。気を利かせてくれたのよ」
呼び止められても困るので、近くの雑貨屋に飛び込んだ。
でも本当は呼び止められて困るのではなく、あの場に居たくなかったから。
雑貨屋に入り、何を見るわけでもなくディスプレイされている商品を眺めながらも、でも殆どそれは視界には入っておらず、先ほどの女性のことを考えていた。
高橋さんが、あんなにも露骨に態度に表すような相手は……あの人しか思い浮かばない。あのニューヨークで会った、あの女性。背の高いあの女性。
そう、ミサさん。
サングラスをしていたし、確か前はお子さんを連れていた。男の子だったような?
でも、あの時はきちんと声も聞いていないし、ほんの一瞬だったから殆ど顔なんて憶えていない。もしミサさんだとしたら、まさかまた会ってしまうなんて……。こんな広い世の中なのに。
「珍しい。憶えていてくれたの? 嬉しいわ。去る者は追わずの貴博が、憶えていてくれたなんて。あら? 新しい彼女?」
「貴女には、関係ない」
高橋さんの抑揚のない声。
何だか険悪な雰囲気で、此処に居てはいけない気がする。
「あ、あの、高橋さん」
咄嗟に高橋さんのジャケットの袖を引っ張った。
「私、あのお店見たいので、ちょっと行ってきますね」
「クスッ。可愛いわね。袖を引っ張るなんて」
「し、失礼します」
「ちょっと、待……」
「いいじゃない。気を利かせてくれたのよ」
呼び止められても困るので、近くの雑貨屋に飛び込んだ。
でも本当は呼び止められて困るのではなく、あの場に居たくなかったから。
雑貨屋に入り、何を見るわけでもなくディスプレイされている商品を眺めながらも、でも殆どそれは視界には入っておらず、先ほどの女性のことを考えていた。
高橋さんが、あんなにも露骨に態度に表すような相手は……あの人しか思い浮かばない。あのニューヨークで会った、あの女性。背の高いあの女性。
そう、ミサさん。
サングラスをしていたし、確か前はお子さんを連れていた。男の子だったような?
でも、あの時はきちんと声も聞いていないし、ほんの一瞬だったから殆ど顔なんて憶えていない。もしミサさんだとしたら、まさかまた会ってしまうなんて……。こんな広い世の中なのに。