可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる
7
18歳になる年、初夏
第2騎士団の団長となり約半年、グースに乗り戦う為の訓練をした後に城壁にグースを着地させた。
騎士達にグースを労うよう指示を出した後、沈んでいく太陽を背中に今日も“死の森”の霧を眺める。
「ルル・・・。」
死んでしまったルルのことを今日も思い出しながら、ルルの名前を呼んだ。
15歳で死んでしまったルルのことを。
16歳にはなれず、結婚する年齢にはなれなかったルルのことを。
「俺の方が歳上になったな・・・。」
生き抜いている。
俺は第2騎士団の団長として、強く強く強く、どこまでも強く生き抜いている。
ジルゴバートや側近に気付かれないようサンクリア王国の実情と内情を調査し、チチに報告書を上げ続けている。
文字も勉強しインソルドでは学ぶことの出来なかったことも学ぶことが出来ている。
“皇子”としてではなく俺は第2騎士団の“ステル”として、強く強く強く、どこまでも強く生き抜いている。
「俺は強くなるだけでいい・・・。
そしたら次の人生でルルに求婚出来る・・・。
ルルは自分よりも強い男としか結婚しないから・・・。」
今日もそう呟いた時・・・
グース達が興奮した様子になった。
それには勢い良く城壁に出られる扉を振り向くと、いた。
ミランダがいた。
ルルと同じくらい光っているミランダがいた。
信じられないことに、この王宮にルルと同じように光って見える女が1人だけいた。
侍女長をしているミランダ。
今日も何の感情も読み取れない顔で俺の元まで真っ直ぐと歩いてくる。
ルルとは全く似ていないはずなのに、ルルよりも随分と歳上の女のはずなのに、ミランダを見るとルルのことを強く思い出してしまう。
こんなにも強く強く強く、思い出してしまう。
そして・・・
“好きだ”と・・・。
“大好きだ”と・・・。
“愛している”と・・・。
18歳になる俺は想う・・・。
ミランダを見る度、15歳で死んでしまったルルに対して日に日に自覚していった想い。
伝えれば良かった・・・。
ルルが死んでしまう時、そう伝えれば良かった・・・。
ルルはどう思っていたんだろう・・・。
ルルのことが好きとか大好きとか愛してるとかそんな気持ちではないと言っていた俺のことを。
そんな想いではないと言っていた俺のことを。
それなのにルルには愛して貰いたいと言っていた俺のことを。
それなのにルルに求婚すると言っていた俺のことを。
後悔しかなかった。
ミランダを見る度、俺は後悔しかなかった。
会いたくて仕方なかった。
俺は今日もルルに会いたくて仕方なかった。
そしたらちゃんと伝えるのに。
今ならちゃんと伝えられるのに。
“好きだ”と、“大好きだ”と、“愛している”と。
“だから結婚しよう”と。
ヒヒンソウの花なんかではない美しい花を渡して、そう伝えられるのに。
後悔しかなかった。
やっぱり後悔しかなかった。
この人生を強く強く強く生き抜いて、早く死にたかった。
早く死んで、ルルに会いたかった。
早く次の人生で、俺はルルに会いたかった。
早く迎えに行かなければ。
ルルは俺が渡したヒヒンソウの花を受け取ってはくれなかったから。
だから次の人生で俺と結婚する約束をしてくれていないから。
早く迎えに行かなければ。
他の男がルルに求婚するよりも早く、ルルのことを迎えに行かなければ。
ミランダのことを眺めながら今日もそう思っていたら・・・
「ジルゴバート王弟殿下がお呼びです。」
ミランダからそう言われた。
第2騎士団の団長となり約半年、グースに乗り戦う為の訓練をした後に城壁にグースを着地させた。
騎士達にグースを労うよう指示を出した後、沈んでいく太陽を背中に今日も“死の森”の霧を眺める。
「ルル・・・。」
死んでしまったルルのことを今日も思い出しながら、ルルの名前を呼んだ。
15歳で死んでしまったルルのことを。
16歳にはなれず、結婚する年齢にはなれなかったルルのことを。
「俺の方が歳上になったな・・・。」
生き抜いている。
俺は第2騎士団の団長として、強く強く強く、どこまでも強く生き抜いている。
ジルゴバートや側近に気付かれないようサンクリア王国の実情と内情を調査し、チチに報告書を上げ続けている。
文字も勉強しインソルドでは学ぶことの出来なかったことも学ぶことが出来ている。
“皇子”としてではなく俺は第2騎士団の“ステル”として、強く強く強く、どこまでも強く生き抜いている。
「俺は強くなるだけでいい・・・。
そしたら次の人生でルルに求婚出来る・・・。
ルルは自分よりも強い男としか結婚しないから・・・。」
今日もそう呟いた時・・・
グース達が興奮した様子になった。
それには勢い良く城壁に出られる扉を振り向くと、いた。
ミランダがいた。
ルルと同じくらい光っているミランダがいた。
信じられないことに、この王宮にルルと同じように光って見える女が1人だけいた。
侍女長をしているミランダ。
今日も何の感情も読み取れない顔で俺の元まで真っ直ぐと歩いてくる。
ルルとは全く似ていないはずなのに、ルルよりも随分と歳上の女のはずなのに、ミランダを見るとルルのことを強く思い出してしまう。
こんなにも強く強く強く、思い出してしまう。
そして・・・
“好きだ”と・・・。
“大好きだ”と・・・。
“愛している”と・・・。
18歳になる俺は想う・・・。
ミランダを見る度、15歳で死んでしまったルルに対して日に日に自覚していった想い。
伝えれば良かった・・・。
ルルが死んでしまう時、そう伝えれば良かった・・・。
ルルはどう思っていたんだろう・・・。
ルルのことが好きとか大好きとか愛してるとかそんな気持ちではないと言っていた俺のことを。
そんな想いではないと言っていた俺のことを。
それなのにルルには愛して貰いたいと言っていた俺のことを。
それなのにルルに求婚すると言っていた俺のことを。
後悔しかなかった。
ミランダを見る度、俺は後悔しかなかった。
会いたくて仕方なかった。
俺は今日もルルに会いたくて仕方なかった。
そしたらちゃんと伝えるのに。
今ならちゃんと伝えられるのに。
“好きだ”と、“大好きだ”と、“愛している”と。
“だから結婚しよう”と。
ヒヒンソウの花なんかではない美しい花を渡して、そう伝えられるのに。
後悔しかなかった。
やっぱり後悔しかなかった。
この人生を強く強く強く生き抜いて、早く死にたかった。
早く死んで、ルルに会いたかった。
早く次の人生で、俺はルルに会いたかった。
早く迎えに行かなければ。
ルルは俺が渡したヒヒンソウの花を受け取ってはくれなかったから。
だから次の人生で俺と結婚する約束をしてくれていないから。
早く迎えに行かなければ。
他の男がルルに求婚するよりも早く、ルルのことを迎えに行かなければ。
ミランダのことを眺めながら今日もそう思っていたら・・・
「ジルゴバート王弟殿下がお呼びです。」
ミランダからそう言われた。