可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる
ステル殿下とミランダとそんな朝の時間を過ごし、そして・・・



「王宮に何のご用ですか?」



“この王宮の中には働いている女を気に留めるような者はおりません。”



ミランダの言葉は何だったのかと思うくらい、王宮の中を歩いていたら男達から声を掛けられる。



王宮での会話はやっぱり鵜呑みに出来ない、またそう思いながら60歳くらいの貴族の男に笑い掛ける。



「花を届けに参りまして、今は次に飾る花をどうするか見て回っている所です。」



「花、ですか・・・?」



男は王宮を見渡しながら飾られている花を確認し、それから真面目な顔で私に視線を戻してきた。



「早くここから帰りなさい。
出来るだけ早く・・・。」



「さっきもそのようなことを言われました。」



私の言葉に男は真剣な顔で深く頷く。



「私には王族の血が薄く流れているからね。
他にも私と同じような男がいればすぐに分かる。
お嬢さんの光りは恐らくあまりにも強いのだろう。
だから悪い者に見付かる前に早くここから帰りなさい。」



この男の顔を確認しながら頷き、聞いた。



「何のお仕事をしていらっしゃる方ですか?」



「私は王都にある小さな街のただの領主だよ。
今日はジルゴバート王弟殿下に・・・“陛下”に、納める税の件でご相談があって来たんだ。」



「税金が年々高くなってるよね?」



「税や穀物だけではなく、年頃の女性や男性までも納めるよう昨夜命令があったんだ。」



それには驚き周りに人がいないのを確認してから聞いた。



「ジルゴバートは何でそんなことを?」



“ジルゴバート”と呼び捨てにした私に男は楽しそうに笑い、それから声を潜めて続けた。



「今聞いた噂では、年頃の女性達はナンフリーク殿下が要望しているものらしい。
なんでも毎夜毎夜貴族の女達と戯れていたらしいが、貴族の女には飽きたと昨日話していたらしい。
それで領地にいる年頃の女性達を納めるように言ってきたのではないかと。」



「とんでもない噂話になってるね、それは。」



ナンフリーク殿下が夜に貴族の女達の相手を止めたのだと考えられる。
そしたら次は平民の女達まで徴集し始めた。
勿論、それをしたのはナンフリーク殿下ではないはずで。
周りにいる貴族か、それともジルゴバートか。



「そして、男達はジルゴバートの私設警護団になる為なんじゃないかと言われていたよ。
魔獣の討伐の為に“死の森”に行かせるとか。」



「討伐じゃなくて捕獲だろうね。」



「え?」



「ううん、何でもない。」



良い噂話を聞かせてくれた男にメルサのように可愛らしく笑い掛け、言った。



「私が聞いた噂話では、今日のジルゴバートは物凄く機嫌が悪いらしい。
オジサンや領地に悪いことをしてくるかもしれないから、日を改めた方が良いかも。」



私の言葉に男は慌てて王宮から去っていった。
< 80 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop