婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

1 このままだと婚約破棄

「婚約破棄……ですか?」


 思いも寄らない衝撃的な言葉に、頭が真っ白になった。
 ここは王子専用の執務室。わたしの目の前には、婚約者であるアンドレイ・アングラレス様が困ったようにこちらを見ていた。

 アンドレイ様はため息まじりに、

「このままでは婚約破棄だと言ったのだ、俺は」

「ど……どういうことですかっ!?」

 わたしは思わずテーブルから身を乗り出す。貴族令嬢としてはしたないことだと分かってはいるけど、迫りくる焦燥感にそうせずにはいられない。

 だって、婚約破棄って?
 わたしとアンドレイ様が?
 どういうことなの?
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