婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

18 軍隊生活④ 〜突入〜 ※若干、血生臭い表現あり※

 競売会場は、王都の中心近くにある劇場の地下にあった。
 時間はちょうど夜の8時を回ったところだ。わたしたち兵士は、暗闇に紛れ込んでそろそろと周囲を巡回していた。

 ……うん、異常なし。
 今回は犯罪組織の規模が大きいので、主に騎士たちが活躍していた。もちろん、会場周辺も下級騎士たちがぞろぞろと蠢いている。だから本当にわたしたち兵士はただのおまけだった。

 わたしは会場内がどうしても気になって、定期的にそわそわと遠目で眺めていた。
 実は、なんとレイは王太子殿下直属の騎士団に所属しているらしいのだ。だから今日は突入の大役を任されていた。さすが高位貴族の令息ね。

 彼を信用していないわけじゃないけど、なんとなく心配だった。
 だって、相手は国際的な犯罪組織ですもの。こんなに巨大な組織だと、各国の高い身分の方々が関わっている可能性が高いんですって。だから一筋縄ではいかないのでは……と、一抹の不安を覚えたのだ。
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