婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

25 秘密の訪問

 今にも雨が降りそうな黒い雲が空を不吉に染めていた。

 わたしは、王都の路地裏を急いでいた。顔が分からないように黒に近い灰色のフードを被って、つらつらと早足で進む。

 目的地はとある古美術店。スカイヨン伯爵から教えてもらった店だ。そこは国内外の珍しい絵画や骨董品などが売買並されていて、その筋では有名な店だそうだ。

 しかし、わたしの目的はそうじゃない。アンドレイ様のお土産を買うわけではない。その古美術店にはもう一つの顔があるのだ。

< 156 / 303 >

この作品をシェア

pagetop