婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

26 優美な死骸

 わたしはがっくりと頭を垂れた。驚愕と怒りと呆れ果てて、ぷるぷると肩を震わせる。

 またしても……またしても、またしてもっ…………!
 
 本当になんなのよ、この人はっ!!

 
「ははははっ! 驚いたか!」

 レイはいつもの飄々とした雰囲気に戻って、王族らしからぬ様子でゲラゲラと声を出して笑っていた。
 途端にムカムカと腹が立ってきた。顔を上げて、貫くような目線を送る。

 彼はわたしの怒りの視線などお構いなしに子供のように瞳を輝かせて、

「オディール嬢は絶対ここに来ると思ったんだ。なぁ、驚いた? 驚いた?」

「その辺にしておけ。侯爵令嬢が怒ってるじゃねぇか」

 向かって左側にいる金髪の男性が大きなため息をついた。そしておもむろに仮面を外すと――、
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