婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

33 僕と一緒に

 ルーセル公爵令息があまりに長いことゲラゲラと笑ってうるさいのでレイが強引に外へ追いやって、今はわたしと彼の二人きりになった。


「まだ話していて大丈夫?」

「もちろんよ」

「そうか。具合が悪くなったらすぐに言ってくれ。実は今日の茶会に君を呼んだのは息抜きをして欲しいのもあるのだが、一番の理由は――」


 ――コン、コン。

 そのとき、部屋の窓をなにかが叩く音がした。驚いて音のほうに目を向けると、

「オディール オディール」

「ヴェル!?」

 なんとヴェルがはるばる大使館から王宮までやって来たのだった。

「おっ、鳥は今日も来たのか」

 レイが窓を開けてヴェルを迎え入れる。エメラルドグリーンのその鳥は、慣れた様子で王太子の懐にピョンと飛び込んだ。
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