婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

「……なるほど、諜報員としての素質は少しはありそうですね」と、スカイヨン伯爵が呟いた。

「えっ――」

「侯爵令嬢、こちらを」

 スカイヨン伯爵はおもむろに長方形の小さな鞄を取り出してわたしの前に置いた。

「これは……なんですの?」

「諜報活動に必要な道具です。こちらでは諜報員には全員渡しております。どうぞ」

 わたしは恐る恐るその鞄を開いた。中には小型のナイフや液体が入った小瓶、細い針のようなものや扇子など色んなものが詰め込めれていた。

「ええっと……こちらは?」

 わたしは小瓶をそっと取り出して訊いた。

「こちらは一滴で象も殺せる毒薬が入っております。あぁ、その隣にあるものは東方の暗器の一つですね。諜報員はどんな身の危険があるか分からないので常に身に着けておいてください。それと念の為言っておきますが、使い方を間違えるとご自身が死亡してしまう可能性があるので十分にご留意を」
< 23 / 303 >

この作品をシェア

pagetop