婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

38 間諜の本領

 わたしは王子の婚約者として、来賓のお客様を立派にお迎えすべく、早速行動を始めた。

 まずは王子専用の宝物庫だ。ここにはアンドレイ様の貴重なコレクションが収まっている。……その中にはもちろん違法で手に入れた美術品の数々も。

 来賓をもてなすために、会場に飾る最高級の芸術品を用意しなければならないから、早く中身を確認しないといけないわ。

 宝物庫の鍵は二つあって、一つはアンドレイ様自身が、もう一つは貸金庫の中に保管してあると以前彼から聞いたことがあった。
 優美な死骸の調査によると、王子が貸金庫へ向かうのは年に数回。主に違法な手段で美術品を手に入れたときだけのようだ。
 最近はローラントでの地下競売に失敗した際に利用したらしいので、しばらくは来ないだろうとリヨネー伯爵令息が言っていた。
< 242 / 303 >

この作品をシェア

pagetop