婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

 部屋の中は一人の成人男性が辛うじて寝転べるくらいの狭さで、この部屋自体がアンドレイ様専用の貸金庫になっていた。
 奥の壁側に引き出しの多い重厚なチェスト、その前には紺色のベルベットが張られた精緻な彫刻の入った椅子が置かれていただけだった。

「さ、宝物庫の鍵を借りるとしますか」と、わたしはゴソゴソと引き出しを探る。

 貴族令嬢がなんてはしたないのかしら……って、昔の自分なら恥じ入っていたかもしれないけど、間諜として慣れた今はもうお手のものだ。
 あら、こんなところに盗品の購入証明が。あら、ここには偽装公文書が。あら、これは恋文……?
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