婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
◆
「オディール! こっちよ」
「よう、久し振りだな」
「ガブリエラさん! リヨネー伯爵令息様もご機嫌よう」
翌日、わたしは街中のカフェでガブリエラさんとジャン・リヨネー伯爵令息と再会した。
実は二人とも先にアングラレス王国に潜入していたのだ。わたしたちは別行動で、それぞれがやるべき仕事を遂行していた。
「調子はどう? 順調?」とガブリエラさん。
「えぇ、今のところ問題ないわ。そちらはどうかしら?」
「おれのほうは大丈夫だ」
「あたしもバッチリよ! 証言も取れたし、証拠となる資料も抑えたわ」
「これから二人で法院へ向かうつもりだ。被害者たちも是非訴えて欲しいと懇願している」
「そう。それは良かったわ。……頑張った人がちゃんと評価される世の中になるといいわね」
「そうね」にわかにガブリエラさんがわたしの頭をポンと叩いた。「これからあなた自身もそうなるわ」
「あ、ありがとう…………」と、わたしは恥ずかしくて頬を染めながら蚊の鳴くような声でお礼を言った。