婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

4 王太子に会いたい

「オディール オディール」

「ただいま、ヴェル。良い子にしてたかしら?」

「オディール・ジャニーヌ ハ コウシャクレイジョウ ソレダケガトリエサ」

「ふふっ、そうね」


 わたしはバサバサと飛んできたヴェルを抱き締めて背中を撫でる。彼は気持ちよさそうにクルクルと喉を鳴らした。

 ローラント王国に来てから、わたしは彼を鳥籠に閉じ込めるのを止めてしまった。
 だって、母国にいたときと違ってわたしは自由に動けるのに、この子だけこれまでと同じように狭い鳥籠の中に閉じ込めておくのは可哀想だと思ったから。
 彼は毎日嬉しそうに部屋中を飛び回っている。生き生きとしたその姿にわたしも目を細めた。

 でも、飛び回れるのはわたしの部屋の中だけというのもそろそろ飽きてきた頃だろうから……これじゃあただの広いだけの鳥籠と変わらないと思うし……外に出してもいいかスカイヨン伯爵にお伺いを立ててみた。
 すると伯爵は、大使館内なら大丈夫だと許可をくださった。次のお休みにでもヴェルと一緒にお庭を散歩しようかしら。

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