婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

 アンドレイ様にはレイモンド王太子殿下のあの噂を伝えるべきか迷ったけど、ひとまず保留することにした。
 別に隠し立てしたいわけじゃないけど、噂が本当か自身の目で確かめてからにしても遅くはないと思ったのだ。まだ直に王太子と接触できていないし……。

 噂というものは恐ろしい。自然と生まれて直後に親を離れて独り歩きをして、気が付くと取り返しのつかない場所にまで進んでいる。

 特に貴族社会では噂は命取りだ。何人もの貴族たちが無責任な与太話に振り回されて、失脚したか分からない。
 逆に、嘘の噂を流して自身の派閥を有利にする狡猾な者もいる。
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