婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


「ねぇ、ヴェル。もう一回言って! お願い!」

「オディール・ジャニーヌ ハ マジメデドリョクカ ソレダケガトリエサ」

「っ……!」

 嬉しさが大波のように、ますます押し寄せてくる。

 わたしが真面目な努力家ですって! 一体、どなたがそう思って下さっているのかしら?
 やっぱり、大使館の人たち? わたしのこと、見ていてくれていたのね。

 すっごく嬉しい……!


 わたしはヴェルをぎゅっと抱き締めて、

「ねぇ、もう一回! もう一回!」

「オディール・ジャニーヌ ハ マジメデドリョクカ ソレダケガトリエサ」

「きゃぁっ! ヴェル、もう一回……お願い!」

「オディール・ジャニーヌ ハ マジメデドリョクカ ソレダケガトリエサ」

「っつつ~~~……!」

 いけないわ。嬉しすぎてヘラヘラと顔の筋肉が緩んでしまう。こんな侯爵令嬢にあるまじき姿、誰にも見せられない。

 ……本当に、頑張ってきて良かった。



「ねぇ、ヴェル。もう一回、ね?」

「オディール・ジャニーヌ ハ コウシャクレイジョウ ソレダケガトリエサ」

「………………そうね」

< 95 / 303 >

この作品をシェア

pagetop