彼に潜む影



「水城さん……」

基治が職場に復帰してから二週間が経った頃。秘書室で雑務を行っていた愛佳に、後輩秘書が声をかけてきた。

「どうしたの?」

「正木商事の代表から社長にお電話なんですが……」

「そう。今は社長室にいらっしゃるでしょう? お繋ぎしてくれる?」

愛佳が指示すると、後輩秘書が困惑気味に眉尻を下げた。

「はい。お繋ぎしようとしたんですが、社長が拒否されているんです」

「どうして?」

「もう取引をやめた企業と話す必要はないから、と」

「どういうこと? 取引を辞めたなんて話、聞いてないけど……」

正木商事は亡くなった前社長の同級生が今も現役で経営を行なっている会社で、東郷グループとの繋がりも厚い企業だった。基治の代に変わってからも、社長とは友好関係にある。
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