溶けた恋

22

あいつらが性格悪い事なんて、昔から知ってた。

表面上は普通に振る舞っていたけど、みんな心の中ではマウントの取り合いをしているのは、ずっと知ってた。

今まで成績は最下位を彷徨い続け、何でも我関せずの冬子は、いじめの対象になることはなかった。

ただ、そんな事実があることは知っていた。
そして、ただその当事者が自分自身になっただけの話だ。

クラスの嫌な空気から抜け出したくて、午後の授業終了後は、急いで教室を後にした。

帰り際には聞こえるような声で
「そんな急いで、今日もトー横?」


と聞こえてきたが、振り向く余裕もなく、急いで帰宅した。


帰宅すると、智子が笑顔で迎えてくれた。

「お帰り、やっぱ冬子が帰ってきてくれると安心するね〜。」

リビングのテーブルには、取り寄せたであろう大学の資料と、数件の塾のパンフレットが並べられていた。


「冬子、先生から褒められたってさっそくおばあちゃんに電話したんだ〜!凄いねって、おばあちゃんも喜んでた!!安心して志望校狙えるよう、塾、もう一回チャレンジしよう!パンフレット、見ておいてね。」


「分かった、見とくよ、ママ」

パンフレットを重ねカバンにしまうと、冬子は力なく2階へ上がっていった。


智子は上機嫌でハーブティーを選ぶ。

「今日はレモンバーム淹れてあげよ♡」


梓馬のTwitterを開くと、何やら櫻井さんが現地の女の子をナンパしてきて一緒にお酒を飲んだら、財布をスられたのでお金がなくなった等と呟かれている。

どうやら現地でお金を稼ぐルールらしい。

緊急事態じゃん。。


1番頼りたかった梓馬に頼れない事実を知り、心の支えを失った冬子は、再度Twitterを開くと

「学校もママも嫌だ。今から広場行く。あえる人いる?」

と書き込み、家を後にした。

智子が何か言ってるのが聞こえてきたが、イヤホンをしてたので全く耳に入らなかった。

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