溶けた恋

23

トー横広場では、いつもの面子が盛り上がっていた。

「トーコ!久々じゃん!」
冬子の手を取り、よしよしと頭を撫でてくれるのは、14歳の美和だ。


美和は冬子と同時期にトー横界隈にたどり着き、家が無いとの事で全く帰っていない子だった。

「み、美和ちゃん、ありがとう。」
冬子は目を潤ませながら美和に抱きついた。

「トーコは今日落ち気味っぽいから、みんなで励まそう!」

ホテルの一室に落ち着き、みんなでワイワイお喋りしてると、本当に今日嫌なことがあったかどうかも分からなくなってきた。
酒がいい感じに回ってきたころ、「トーコもやってみる?」と美和が瓶を勧めてきた。

「これ飲むと、ほんと嫌なことぜんぶ忘れられるよ?美和も毎日毎日おじの相手とか辛くてこれ飲みながらやってるんだけど、全然普通になったし、楽しんでできるっていうか…」

美和は酒が回り、既に呂律が回っていなかった。


酒が回り意識が朦朧としていた冬子は、

「美和ちゃんありがとう、私も忘れたいことある。……貰ってもいい?」

冬子は美和から風邪薬を受取り、10錠ほど口にした。

「トーコ、そんなんじゃまだ足りない。もっと、もっと飲んでみて?」


美和に勧められるまま、冬子はさらに風邪薬を口に放り込んだ。次第に飲酒とは異なるふわふわした感覚と、世の中のもの全てを受け入れたくなるような幸せな気持ちがやってきた。

学校で嫌なことがあっても
ママがどんなに冬子を見てくれなくても
梓馬さんが相手してくれなくても

それでも、私は凄く幸せ。みんなも幸せだよね?



良かった…!



隣の美和と手を繋いで笑い転げ、次第に夜が明けていった。



< 23 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop