再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています


勢いよく走ってきた男は、私のショルダーバッグが目の前に落ちていると気付いているようだったけれど避けることができずに足を取られて激しく転倒した。

思っていた方法とは違うけれど、どうやら男の逃走を止めることができたらしい。

男は転倒した弾みで盗んだバッグを手から離してしまい、それが床を滑り、私の近くまできたので慌てて掴んだ。


「てめぇ。よけいな真似しやがって」


尻餅をついた男がぎろりと私を睨む。転倒するきっかけとなったショルダーバッグを投げたのが私だと気付いたようだ。


「それ返せ」


立ち上がった男が盗んだバッグを奪い返そうとこちらに向かって歩いてくる。

逃げないと。

でもこんなときに腰が抜けてしまって足が動かない。それでもバッグだけは渡すものかと両手で持って胸に抱える。


「早く返せっ!」


絶対に返さない。これはあの女性のバッグなんだから。

胸に抱えたバッグを持つ手にぎゅっと力を込めて男のことを睨みつけるように見つめる。

本当はものすごくこわくて震えているけど、ほんのわずかに残る正義感でなんとか立ち向かっているだけ。


「ムカつくなぁてめぇ」


まさか逃走のじゃまをされてバッグまで奪われるとは思ってもいなかったのだろう。怒りで震える男がズボンのポケットから取り出したのは小さなナイフだ。


< 102 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop