再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
『私は当時七歳だったけどよく覚えています。荷物を持って家を出ていく母の背中を――』
悲しげに瞼を伏せる千晶ちゃん。
初対面の俺に話す内容にしては重たいが、きっと彼女も今日という日を迎えるたびに母親が家を出て行った当時のことを思い出して辛くなるのだろう。
そんな胸の内を吐露したくて俺に話しているのだろうと思った。
『それは辛いな』
俺には父親も母親もいる。千晶ちゃんの気持ちをすべて理解するのは難しいが、母親に置いていかれるなんて普通に考えて辛い経験だ。
すると千晶ちゃんは俯いていた顔を上げて笑顔を作った。
『しばらくは辛かったし悲しかったし寂しかったけど、父が支えてくれたので立ち直ることができました。今はもう大丈夫です』
千晶ちゃんがちらっと視線を向けたのはリビングボード。そこには写真が飾られているのだが、写っているのは千晶ちゃんと佐波さんだけ。
『でも父はまだ立ち直れていないのかな。毎年この日だけは酔い潰れるまでお酒を飲んで帰ってくるんです』
そう言って千晶ちゃんは俺に視線を戻して苦笑した。
『加賀美さん、今日は父に付き合ってくださってありがとうございました。加賀美さんのことは父から話をよく聞いています。とっても仕事ができる真面目でいいやつだって』
『佐波さんがそんなことを?』
『はい。これからも父のことをよろしくお願いします』
ぺこりと頭を下げる千晶ちゃんに『こちらこそ』と答えて、俺も深く頭を下げた。