再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています


メニュー表でクレームブリュレとタルトタタンを見比べながら頭を悩ませていると、「千晶ちゃん」と向かいの席から加賀美さんに呼ばれた。

もしかして早くデザートを決めてという催促だろうか。


「もう少し待ってください。今、クレームブリュレかタルトタタンで迷っていて」

「そうじゃなくて、ちょっと選ぶの中断してもらってもいいかな」

「え?」


メニュー表から顔を上げるとさっきまで和やかに話していた加賀美さんの表情がほんの少しだけ険しいことに気付く。


「どうしましたか?」


なんだかいつもと違う様子の彼を不思議に思い、首を傾げた。

加賀美さんが声を潜めて口を開く。


「俺から見て右斜め前方。千晶ちゃんからだと左斜め後方のここから少し離れたテーブル席にひとりで座っている男がいる。そいつがさっきからずっと千晶ちゃんを見てる」

「えっ」


左斜め後方? 振り向いて確認しようとすると「待って」と加賀美さんに止められた。


「不自然に見ない方がいい」

「でも気になります。私を見ているんですよね。知り合いかもしれないし」

「いや、あの様子は知り合いって雰囲気ではなさそうだな」


険しい表情を崩した加賀美さんが飲み物に口をつける。


「どういった方ですか?」


特徴を言ってもらえばわかると思った。

加賀美さんはさり気なく視線を右斜め前に向けると、メニュー表を手に取って口元を隠す。

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