【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
マリアは、無惨にも黒い土で汚れた床に、『それまでスープだった』水分としなびたキャベツが散らばっているのを目で追った。
「ひどいわ……」
うすら笑うでもなく、睨みつけるでもなく。マリアがどう出るのかをじっと伺いながら、男は無表情を貫いている。
——神様から与えられた大切な食べ物を、こんなふうに扱うなんて!
マリアは静かに、床に膝をつく。
転がったパンを拾い上げた。
——この小さなパンだって。きっと美味しく食べて欲しいと、誰かが焼いてくれたものに違いない。
「いただきます」
岩のように固くなったパンを、華奢な指先に力を込めて千切る。小さくなったかけらをゆっくりと口に含んだ。