【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「なんと……そのお茶役、辺境居酒屋の下女出身ですって。
 後宮のわたくしたちを(ないがし)ろにしながら、下女に寵愛をお与えになるなんて。納得がいきませんわ……!」

 リズロッテの中で何かが、ふつり、と切れる音がした。

 この二年という歳月。
 皇太子にどれほど冷たくあしらわれても、目を逸らされてもリズロッテが後宮を出る事なく耐えて来られたのは、皇太子が女嫌いだと信じていたからだ。

 女嫌いなら冷たく扱われるのは仕方がない。
 だけどいつかは、女嫌いの皇太子だって正妻を迎える日が来る。

 それが自分であればと淡い夢に浸り……わずかばかりの希望をただひたすらに願いながら、同じ(こころざし)を持つ後宮の女たちの冷ややかな視線にも耐えて来たのだ。
 
 「……下女、ですって……?」
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